口唇口蓋裂治療

 

口唇口蓋裂とは

口唇口蓋裂(cleft lip and palate)とは、お顔周囲に生じる先天性疾患の中でも最も発現頻度の高い疾患であり、唇や歯ぐき、口蓋の部分が癒合不全によって分かれてしまっている状態(裂と呼びます)を言います。当院では、今までの多くの口唇口蓋裂に関する知識と経験をもとに、口唇口蓋裂の診療を積極的に行っている連携医療機関の形成外科医、口腔外科医と連携したチーム医療を行っています。また当院は、自立支援医療 育成医療 更生医療の指定病院です。口唇口蓋裂の患者さんは、申請により、手術、矯正歯科治療については健康保険が適応され、育成医療による公費補助が受けられます。詳細につきましては一度、当院までご相談ください。

口唇口蓋裂の基礎知識

01 口唇や口蓋の作られる時期

お腹の中の赤ちゃんは、精子と卵子が受精してから、約8週目頃に口唇が作られます。また、約12週目頃に口蓋が作られます。つまり、この妊娠2〜3ヵ月の時期に何らかの問題が生じ、唇や上あごが作られる過程で癒合不全を起こしたことによって口唇口蓋裂が発生します。

02 口唇口蓋裂を起こす可能性のある因子

現在では、出生前の胎生期における口唇や歯茎、口蓋の癒合不全や、舌の影響、遺伝的な原因など様々な可能性が示唆されていますが、未だその原因は明らかとなってはいません。以下の要因の関連が示唆されています。

環境因子|子宮内の変化

  • 高齢出産
  • 疲労や精神的影響
  • 栄養不足(ビタミン・糖などの問題や貧血)
  • 嗜好品(アルコール・たばこ・コーヒー)
  • 病気(梅毒・風疹・インフルエンザ・水痘・トキソプラズマ・おたふく風邪・循環器系障害)
  • 薬(避妊薬・サリドマイド・ステロイド)
  • X線照射
  • その他

03 口唇口蓋裂の赤ちゃんが生まれる割合

発生頻度は人種によっても異なり、黄色人種に多いと言われています。日本人における発生率は欧米人などと比べて高く、出生児400〜500人に1人です。(白人では700人に1人、黒人では2000人に1人)

04 口唇口蓋裂の部位や性別による発生頻度

性別による発生頻度は、口蓋裂が男より女に多く、口唇口蓋裂は女よりも男に多いと言われています。片側性口唇口蓋裂は両側性口唇口蓋裂よりも発生頻度が高いと言われています。片側性の場合、右側口唇口蓋裂よりも左側口唇口蓋裂の方が発生頻度は高いです。

05 口唇口蓋裂と遺伝

両親が正常で、1人の子供に口唇裂・口蓋裂がある場合、次の子供への発症の割合は約8%(12人に1人)と言われています。また、親が口唇口蓋裂の既往がある場合、口唇口蓋裂の子供が生まれる可能性は、16人に1人程度と言われています。

口唇口蓋裂の治療の流れ〜出生から成人まで

口唇口蓋裂の治療は、出生直後から成長発育が完了する成人期まで続きます。ここでは、大きな治療流れをご説明します。

01 成人期までに関わる診療科

  • 形成外科
  • 口腔外科
  • 耳鼻科
  • 小児科
  • 小児歯科
  • 矯正歯科
  • 補綴歯科
  • 放射線科
  • 心理学者
  • 言語治療部
  • ケースワーカー

02 各診療科の治療のスケジュール

画像:各診療科の治療のスケジュール

口唇口蓋裂の治療は、出生直後より開始する必要があります。哺乳障害の改善と共に、口唇や口蓋、お鼻の変形を軽減させるためにNAMプレートによる初回形成手術前の矯正治療を行います。その後、徐々に乳歯が生えてくるのを経過観察していきます。その後、一般的なこどもの矯正治療と比べて少し早い時期(4〜6歳頃)から、簡単なこどもの矯正治療を開始します。口唇口蓋裂の影響による上あごの劣成長を改善することが目的です。上あごの成長を促して、上下のあごのバランスを改善させます。また同時に、顎裂部への骨移植がスムースに行えるように歯列の準備を行います。

顎裂部への骨移植を行った後は、必要に応じて引き続き子供の矯正治療にて成長発育誘導を行います。永久歯列の完成する頃に本格的なおとなの矯正治療の開始時期を検討します。だいたい11〜12歳頃から行います。歯は顎の骨に生えているので、咬み合わせは顎の成長が終わる16〜18歳まで変化します。従って、早くから治療を始め、一度良い咬み合わせになっても、その後のあごの成長により再びかみ合わせが変化することもあります。また、上あごと下あごのバランスが悪い場合には、成長が終了する頃を目安に、手術によりあごの骨のバランスを整える場合もあります。口唇口蓋裂の治療は、どうしても出生時から成人期までと長期間に渡るため、ご本人やご家族の通院や治療における努力、労力が必要です。そのため、出来るだけ効率よく、長い治療期間の中で、ポイントポイント毎に治療を進める判断や方針が重要です。当院では、できるだけ皆様の負担と治療効果のバランスを考えながら、望ましい治療となるように日々努めています。ご質問やご心配などの際には、いつでもお気軽に当院までご相談ください。

矯正治療のスケジュール

画像:矯正治療のスケジュール

矯正治療のスケジュールは、形成外科・口腔外科での手術の予定や、成長に合わせて進めていきます。大きく分けて「出生直後から始まる赤ちゃんの矯正治療」「4〜6歳頃から永久歯が生えそろうまでの時期の子供の矯正治療」「永久歯が生えそろってあごや身体の成長が完了する時期に行う大人の矯正治療」の3つがあります。

A 赤ちゃんの矯正治療

  • 手術の準備
  • 哺乳の改善

B 子供の矯正治療

  • 検査(レントゲン・CTなど)
  • 顎裂骨移植部の前準備
  • 受け口や反対咬合の改善
  • 上下あごの成長コントロール

C 大人の矯正治療

  • 永久歯の歯並びの完成

赤ちゃんの口唇口蓋裂の治療の流れ

01 出産前(胎児期):産婦人科

出産前(胎児期):産婦人科

近年では出生前診断の検査や技術が進歩しており、口唇口蓋裂を持って生まれてくる可能性が出生前に分かる場合があります。まず、口唇口蓋裂の赤ちゃんであることが分かった場合には、出生後すみやかに適切な医療機関で適切な治療が受けられるように、準備されることをお勧めします。そのためには、まずは専門の医師によるカウンセリングを受けていただきます。内容は「口唇口蓋裂の正しい知識と理解」「出生後すぐに直面する哺乳の問題」「顎発育誘導」「初回手術など治療の流れ」などについてです。

当院の連携医療機関

  • 東大病院
  • 東京医科歯科大学
  • 横浜市立大学
  • 国立国際医療センター
  • こども医療センター

02 赤ちゃんが生まれたら

出生直後〜1歳頃:小児科・形成外科・耳鼻科・口腔外科・矯正歯科

口唇口蓋裂の赤ちゃんの場合、裂があることでお鼻とお口がつながってしまっているため、ミルクを飲む際にミルクが鼻に漏れて上手く飲めません。出生後、最初に直面する問題が哺乳障害であり、哺乳が難しい赤ちゃんの場合には、それぞれの赤ちゃんに合った乳首を選択します。また、口蓋床(哺乳床)を使うことでお鼻とお口を分けてミルクを飲みやすくしたりします。裂のある口蓋部を口蓋床で覆うことで、ミルクを吸う効果と乳首を圧迫する効果が期待されます。

また、口唇口蓋裂の場合には、裂によりお鼻の変形が見られるため、NAM(Naso Alveolar Molding)を使用することで、生後間もないお鼻の軟骨の可塑性の高い時期から、外鼻の形の矯正も同時に行います。このNAMプレートにより、鼻軟骨が挙上され、鼻柱をまっすぐにして初回の形成手術までの間に、できるだけ本来の状態に近づけていきます。このような処置を受けるためにはそれぞれ専門の医療機関を受診する必要があります。

03 口唇口蓋裂の赤ちゃんの矯正治療

出生直後〜1歳頃

上あごに割れ目があると鼻と口はつながった状態になるため、生まれたばかりの赤ちゃんは上手にミルクを飲むことができません。そのため、出生直後から、プレート(口蓋床)を用いた治療が必要になります。

プレート(口蓋床)について

  • 赤ちゃんの入れ歯のようなもの
  • 歯科用のプラスチック
  • ステント(突起した部分)により鼻の形状を修正
  • 段階により形が少しずつ変化
  • 通院は約2〜4週間に1回
  • 治療期間は3〜10ヵ月前後
  • この治療後に形成外科・口腔外科で手術

プレート(口蓋床)の効果と目的

  • 上あごの割れ目を小さくしてから手術をすることで、その後の上あごの成長への影響を少なくします。上あごの割れ目が大きい状態のまま手術をすると、手術跡が大きくなってしまい、上あごの成長が抑制され、結果として受け口になってしまいます。
  • 鼻とお口をプレートで分けることによって、ミルクが飲みやすい環境を作ります。
  • 鼻の穴をステントで持ち上げて、変形しているお鼻の形を整えます。

割れ目(ピンクの部分)が徐々になくなり治っていく過程

この治療は適切に行えば難しいことはありません。手術までの数ヶ月間、根気よく続けることが大切です。出生後より口唇裂、顎裂、口蓋裂を認めました。左右の歯槽が顎裂を境に離開していたため、そこへ舌が入ることで余計に顎裂を左右に押し広げてしまいます。そこで、舌が入らないように、そして、左右の周囲筋肉を引き寄せることで、生後間もない赤ちゃんの自然な形態へ戻ろうとする力を引き出すために、哺乳床を改良したナムプレート(Num plate)を用いて、顎裂の狭小化を図る術前外鼻矯正を行いました。治療の結果、顎裂部の狭小化が得られました。これにより左右の歯槽堤および口蓋を一体化させて閉鎖する口唇口蓋形成術をより良い条件で施行することが可能となります。リスクとして、出生後まもない新生児および母親への矯正装置装着に伴う精神的、実質的な労力としての負担、装置装着が接触することによって生じる歯槽堤への潰瘍形成、頬部から上唇部付近へ用いる皮膚テープによる皮膚粘膜のあれ、などが考えられた。本症例では幸いにも、リスクに挙げた症状の発生に伴う治療継続困難な状況は無く、無事に口蓋形成手術前の術前顎矯正治療を完了した。0歳男性。治療期間2ヵ月。お悩み:顎裂部の閉鎖。治療内容:ナムプレートを用いた口唇口蓋形成手術前の術前外鼻および口蓋矯正治療。矯正装置:口蓋床にネイザルステンとを用いたナムプレートを用いた術前外鼻および顎裂部矯正治療。費用は、保険適応症例であり、装置料・基本契約施術料・調整料などとして自己負担額の総額として約1万円。診断名:左側唇顎口蓋裂。

初回の手術(口唇形成術)について

出生直後〜1歳頃:形成外科・口腔外科・麻酔科・矯正歯科

口唇裂の初回形成手術は通常生後3〜9ヵ月頃に行われます。その理由として、3ヵ月頃までには体重も6kgを超え、患児の体力がついてくるので、手術や全身麻酔が受けられるようになる、1ヵ月健診も終えて出生時には診断されなかった合併症もある程度把握できてくることが挙げられます。口唇裂の手術では、口唇裂を閉鎖しバランスのとれた自然な口唇形態を再建するとともに、偏位した鼻柱や鼻翼基部の位置の適正化が重要となります。また、口のまわりの筋肉(口輪筋)の型を正常にすることも手術の目的の一つです。

口蓋形成術について

1.5〜3歳頃

口蓋形成術の目的は、お口とお鼻を分ける境目である口蓋部分を作ることです。また、軟口蓋における口蓋帆挙筋などの左右に分かれた粘膜や筋肉を元に戻す手術を行います。お鼻とお口の部分が分けられることにより、正常な鼻咽腔閉鎖機能を獲得します。口蓋形成術は通常1.5〜2歳頃までに行われます。施設によっては出生後の初回形成手術で口唇形成と口蓋形成を同時に行う場合もあり、その場合にはこの2回目の口蓋形成術は不要となります。口唇形成術と口蓋形成術の2回に分ける理由としては、早すぎる時期に口蓋形成を行うと、その手術による傷跡よって上あごの発育が抑制されてしまうことがあるため、ある程度、上あごの発育の進んだ2歳前後の頃を見計らいます。また、1歳から発話がはじまり2歳頃にはかなり言語も増えるため、この頃までに口蓋を閉鎖してより良い鼻咽腔閉鎖機能を獲得するように促すことで、良好な構音の発達を期待するためです。

口蓋形成術(Furlow法)のシェーマ

咽頭弁形成術、言語指導の開始時期

2〜4歳頃

口唇や口蓋の形成手術を受けても、もともと裂の大きい場合などでは、言語の発育改善のため言語指導が必要となる場合があります。言語の問題としては、構音障害と言語の出始めが少し遅れる場合があります。程度による個人差がありますが、必要があれば、言語聴覚士により口蓋裂術前から定期的に言語発達と構音の評価・指導を受けていただきます。口蓋裂による構音障害が認められ、自然治癒しない場合には言語訓練を行います。また、4歳になっても開鼻声が改善せず、鼻咽腔閉鎖不全がある場合には、咽頭弁形成術の必要性についても検討します。

子供の矯正治療の流れ

赤ちゃんの時期の矯正治療と外科手術が終わったら、定期的に矯正歯科に来院していただき、徐々に乳歯が生えてくるのを経過観察していきます。口唇口蓋裂のお子さまの場合、手術の傷跡や、もともとの上あごが小さく成長が少ないことなどが影響して、反対咬合になりやすい傾向にあります。通常4〜6歳くらいの時期に上あごの成長を促す治療や、その後に受ける外科手術の準備のための矯正治療を行います。子供の矯正治療は上下あごの骨格的なバランスを整えたり、永久歯の生えかわりを促すなど、お子さまの将来のお口の環境をよりよくするために非常に重要な治療です。

画像:子供の矯正治療のポイント

子供の矯正治療のポイント

  • 4歳前後で検査し、治療計画を立てる
  • 上下のあごの成長のバランスを整える
  • 割れ目への骨移植のタイミングを検討し準備する
  • ねじれた歯や反対のかみ合わせを治す
  • 永久歯への生えかわりを促す
  • 治療期間はそれぞれですが1〜3年程度
  • 通院頻度は1〜4ヵ月に1回

01 上あごの成長誘導|4〜12歳前後

口唇口蓋裂の患者さんは、上あごの発育が悪いために、下の歯が上の歯の前にある反対咬合(受け口)となることが多く、矯正治療を必要とする方がほとんどです。成長期に不足している上あごの成長を補います。初回の口蓋形成手術に伴う上顎骨への発育抑制を改善するため、上顎骨に対する顎発育誘導を目的とした第一期矯正治療(小児矯正治療)を行いました。治療の結果、上顎骨の発育誘導が得られ結果として反対咬合の改善が得られました。リスクとして、矯正治療期間の長期化に伴う患者および保護者への精神的、肉体的な負担の増加、上顎前方牽引装置の装着に伴う皮膚粘膜のあれ、などが考えられた。本症例では幸いにも、リスクに挙げた症状の発生に伴う治療継続困難な状況は無く、無事に第一矯正治療を完了した。7歳女性。治療期間2年2ヵ月。お悩み:上顎骨の低発育に伴う前歯部の反対咬合。治療内容:上顎骨の顎発育誘導を図ることを目的とした第一期矯正治療。矯正装置:リンガルアーチおよび上顎前方牽引装置を用いた第一期矯正治療。費用は、保険適応症例であり、装置料・基本契約施術料・調整料などとして自己負担額の総額として約10万円。診断名:口蓋裂。

受け口だとどうなるの?

  • ものを十分に噛みにくい
  • 疲正しい発音がしにくい
  • 虫歯や歯周病になりやすい
  • 上下のあごの成長のバランスが崩れやすい

02 骨移植の前準備|4〜6歳前後

骨がない部分や骨が足りない部分には歯が生えてくることはできません。そのため、顎裂部に骨を移植する手術を6歳以降に受ける必要があります。
そのための準備として、上あごの歯列の形が割れ目を境として非対称にゆがんでいたり、幅が狭くなっているような場合には、歯列の形を整えるための矯正治療を行います。顎裂部への骨移植術を行う前準備として左右の歯槽堤の連続性を回復することを目的として、上顎歯列の拡大による第一期矯正治療(小児矯正治療)を行いました。治療の結果、上顎歯列の連続性の回復および顎裂部周囲の歯の位置異常の改善が得られました。リスクとして、矯正装置装着に伴う違和感、歯の移動に伴う痛み、舌や頬粘膜などの周囲軟組織への潰瘍形成が考えられた。本症例では幸いにも、リスクに挙げた症状の発生に伴う治療継続困難な状況は無く、無事に第一矯正治療を完了した。5歳女性。治療期間8ヵ月。お悩み:左側唇顎口蓋裂に伴う顎裂部周囲の乳歯の位置異常。治療内容:上顎歯列の拡大および左側Bの舌側転移の改善を目的とした第一期矯正治療。矯正装置:ポータータイプの緩徐拡大装置を用いた第一期矯正治療。費用は、保険適応症例であり、装置料・基本契約施術料・調整料などとして自己負担額の総額として約10万円。診断名:左側唇顎口蓋裂。

03 顎裂部(割れ目)への骨移植|6〜12歳前後

顎裂部二次骨移植術とは|6〜12歳頃

顎裂部(上あごの割れ目の部分)への骨移植は初回の口唇形成術・口蓋形成術の際に同時に行う場合もありますが、一般的には口唇口蓋閉鎖手術後ある程度、顎骨の発育が進んだ段階で行います。多くは、顎裂部に歯が生えるための土台となる骨が無い、量が十分ではない場合に、歯茎の下に骨を作り永久歯が並べられるようにすること、左右に分かれている上あごの一体化すること、などを目的としています。顎裂部骨移植術の時期は一般的に、上の永久歯の犬歯が出てくる前の時期である6〜12歳頃に行われます。全身的な状況やお口の中の状況、就学などの環境的な状況に応じてそれぞれの最適な時期を検討します。

04 骨移植したところへ歯を並べる|6〜12歳前後

05 前歯の反対咬合の矯正|6〜12歳前後

前歯が反対咬合になっている場合には、部分的に矯正装置をつけて、かみ合わせを治します。上顎前歯部反対咬合を改善することを目的として、上顎歯列前歯部の前方拡大による第一期矯正治療(小児矯正治療)を行いました。治療の結果として前歯部反対咬合の改善が得られました。リスクとして、矯正装置装着に伴う違和感、歯の移動に伴う痛み、舌や頬粘膜などの周囲軟組織への潰瘍形成が考えられた。本症例では幸いにも、リスクに挙げた症状の発生に伴う治療継続困難な状況は無く、無事に第一矯正治療を完了した。7歳男性。治療期間8ヵ月。お悩み:両側唇顎口蓋裂に伴う前歯部反対咬合。治療内容:上顎歯列の前方拡大による反対咬合の改善を目的とした第一期矯正治療。矯正装置:リンガルアーチにダブルスプリングを用いた第一期矯正治療。費用は、保険適応症例であり、装置料・基本契約施術料・調整料などとして自己負担額の総額として約10万円。診断名:両側唇顎口蓋裂。

06 ねじれて生えてきた永久歯の矯正|6〜12歳前後

生えかわりが進んでいく過程で、永久歯がねじれて生えてきたり、ずれて生えてくることがあります。特に顎裂部に近い部分では、永久歯が正しい位置に生えてくることができずに、ねじれて生えてくる場合がほとんどで、部分的に矯正装置をつけ、歯の位置を改善します。上顎両側3番の萌出位置異常を改善することを目的として、部分的にマルチブラケット矯正装置を装着するセクショナルアーチによる第一期矯正治療(小児矯正治療)を行いました。治療の結果として上顎前歯部の叢生ならびに萌出位置異常の改善が得られました。リスクとして、矯正装置装着に伴う違和感、歯の移動に伴う痛み、虫歯や歯肉炎の発生、歯根吸収、歯肉退縮、舌や頬粘膜などの周囲軟組織への潰瘍形成が考えられた。本症例では幸いにも、リスクに挙げた症状の発生に伴う治療継続困難な状況は無く、無事に第一矯正治療を完了した。7歳女性。治療期間1年3ヵ月。お悩み:両側唇顎口蓋裂に伴う前歯部叢生。治療内容:部分的にマルチブラケット矯正装置を装着するセクショナルアーチによる第一期矯正治療(小児矯正治療)。矯正装置:部分的にマルチブラケット矯正装置を装着するセクショナルアーチを用いた第一期矯正治療。費用は、保険適応症例であり、装置料・基本契約施術料・調整料などとして自己負担額の総額として約10万円。診断名:両側唇顎口蓋裂。

大人の矯正の流れ|12〜18歳頃〜

画像:矯正治療のスケジュール

大人の矯正の目標

  • それぞれの人にあった永久歯咬合の完成
  • できるだけ天然の歯でかみ合わせを完成
  • 機能的で安定性の高いかみ合わせの完成
  • お顔や口元のバランスの調和をはかる

大人の矯正のポイント

  • 治療期間は2〜3年程度
  • 通院は1〜2ヵ月に1回
  • よい治療結果を得るためには、患者さんやご家族の協力が大切
  • あごのズレがある場合には、手術を併用した矯正治療を行うこともある

上あごの手術を併用した治療の一例

生後の口蓋形成手術に伴い、前歯部の骨格性の反対咬合を呈していました。顎裂部への骨移植を図り、移植骨の生着を向上させるためにも顎裂部への隣在歯の移動を行いました。その後、上顎骨の前方への移動を図る目的で、上顎骨へのLefort1型の骨きり術に加えて骨延長機を用いた骨延長術(Distraction Osteogensis)を行いました。同時に下顎骨の後方移動術(下顎枝矢状分割術)を行い上下顎骨の位置不正の改善を図りました。全顎的に矯正装置をつけ、術前術後の咬合管理を行います。治療の結果として前歯部の反対咬合が改善されると共に、顎裂部の閉鎖がなされ左右の歯槽堤が一体化され、歯科的な補綴処置を行うことなく天然歯列での個性正常咬合の獲得が成されました。リスクとして、矯正装置装着に伴う違和感、歯の移動に伴う痛み、虫歯や歯肉炎の発生、歯根吸収、歯肉退縮、舌や頬粘膜などの周囲軟組織への潰瘍形成、外科手術に伴う侵襲、全身麻酔や投薬に伴うアレルギー症状などが考えられました。本症例では幸いにも、リスクに挙げた症状の発生に伴う治療継続困難な状況は無く、無事に第一矯正治療を完了しました。18歳女性。治療期間3年3ヵ月。お悩み:両側唇顎口蓋裂に伴う前歯部反対咬合、叢生。治療内容:外科的矯正治療。手術内容は上下顎同時移動手術。上顎Lefort 1型の骨切り術および骨延長術、下顎後方移動術(下顎枝矢状分割術)。矯正装置:上下顎唇側からのマルチブラケット装置を用いた矯正治療。費用は、保険適応症例であり、装置料・基本契約施術料・調整料などとして自己負担額の総額として約30万円。診断名:骨格性下顎前突症、両側唇顎口蓋裂。

保定

矯正された歯やあごの後戻りを防ぐために保定装置(歯並びが乱れないように維持する装置)を装着し、年に3〜4度、歯並びとかみ合わせのチェックを行います。特に口唇口蓋裂の方の場合には、上あごの歯列が狭まって再び歯列が乱れてしまう再発が起きやすい場合があります。できるだけ、再発の起こりにくい治療方針を考えて実践していくことが重要です。

矯正治療にかかる費用について

01 医療保険(健康保険や共済など)の利用

02 育成医療(18歳以上の場合は更生医療)の利用

  • 高育成医療意見書
  • 育成医療給付申請書
  • 世帯調書

必ず、治療の開始前に申請する必要があります。

矯正治療は通常私費診療ですが、口唇口蓋裂のお子さまに対する矯正治療は、厚生労働省による矯正歯科診断施設の指定を受けた医院では、健康保険が適用されます。また育成医療等の公費補助によって自己負担金が一定額以上免除される制度もあります。詳しくは当院までご相談ください。

最後に

口唇口蓋裂の治療は、出生時から成人期までと長期間に渡るため、ご本人やご家族の通院や治療における努力や労力が必要です。そのため、できるだけ効率よく、長い治療期間の中で、ポイントをおさえた治療を進める判断や方針が重要です。

当院では専門的な知識と経験をもとに、皆様の負担と治療効果のバランスを考えながら、口唇口蓋裂治療の一環である矯正歯科治療を、ご安心して受けていただけるように努めております。ご質問やご心配などについても、お気軽に当院までご相談ください。

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